建築業界一年目:お施主様と学んだ床リノベの基礎知識

建築業界一年目:お施主様と学んだ床リノベの基礎知識

私たちは床のリノベーションを行う際、建築に携わる業者の方と一緒に住まいについて考えていかなければなりません。建築業界は専門性が高い世界ですが、同時に私たちの住環境に関わる身近なものでもあります。商品の選定や業者の方とのやり取りは、業界のことを少し知っているだけでも随分とスムーズになるでしょう。かくいう私自身も建築業界に入ってまだ1年目ですので、今回は新人ならではの目線から、床リノベのために知っておくと役に立つ基礎知識をご紹介していこうと思います。

1.建築業界は専門用語が非常に多い

設計 画像

建築業界は非常に専門用語の多い業界といえます。床を選ぼうと思ってカタログを見たって、商品の規格にはわけのわからない単語がずらっと並んでいて、おまけに坪単価だの設計価格だの、値段の見方すらよくわからないといった有様です。フローリングの購入を検討されている方の中には、共感していただける方がいらっしゃるのではないでしょうか。

最初に感じたのは、面積を表す単位が分かりにくいということです。不動産の面積を表す単位は様々なものが使われています。慣習的な使用法などが残っているため複数の単位が使い分けられているようです。しかし、慣れていない人からすると簡単に比較ができず非常にわかりにくいと感じます。

また、フローリングの種類もわかりにくいポイントの一つです。フローリングは表面材の素材や厚みなどでいくつかの種類に分類されます。同じ木の種類なのに値段が全然違うと思ったら、フローリングの種類が違うかもしれません。この分類は基本的にどのメーカーや店舗でも共通のものです。

最初はよくわからず面倒な専門用語ですが、一度覚えてしまうと便利なものです。床リノベの基礎知識について、少しずつ学んでいきましょう。

2.面積を表す単位

私自身がまずわかりにくいと感じたのは、面積を表す単位についてです。よく使われるものだけでも数種類あるので、代表的なものをいくつかご紹介します。

・平米(平方メートル)

平米

面積を表す単位の中でも最も一般的なものであり、㎡とも表記されます。1平米というと、1辺が1mの正方形の面積(1m×1m)のことで、メートルを基準とした面積の単位です。
1平米、1平方メートル、1㎡、すべて同一の面積を表しています。
ちなみに平米と書くときの「米」は、メートルという言葉に米の字を当てたことからこのような表記になっています

・坪

坪

尺貫法に基づいて面積を表す日本独自の単位です。尺貫法とは日本にメートル法が導入される前に使われていた計量の方法であり、長さを寸・尺・間(けん)、質量を貫、体積を升で表します。
長さを表す単位の関係は10寸=1尺、6尺=1間となっており、1尺は約30.303cm、1間は約1.818mとなっています。
1坪は1辺が1間の正方形の面積を表しており、平米に換算すると3.30579平米となります。また、1坪は約3.3平米として概算されたりもします

尺貫法は1951年に制定された国の法律である計量法によって廃止されることが決まりました。しかし、現在でも不動産の取引の中で土地や建物の面積を表すために、慣例的に使用されることがしばしばあります。

・畳

ご存じの方も多いかと思いますが、畳(帖と書くこともあります)は畳一枚分の面積を表します。
しかし、畳一枚の面積は地域によって異なっています
具体的には以下の通りです。

名称地域面積
京間西日本エリア191.1cm×95.5cm=1.82㎡
中京間東海エリア182.0cm×91.0cm=1.65㎡
江戸間東日本エリア176.0cm×88.0cm=1.54㎡
団地間団地、公団住宅など170.0cm×85.0cm=1.44㎡

畳のサイズが違う理由についてはさまざまなものが考えられますが、地域によって家の設計方法に違いがあったためという説が有力です。
もともと近畿地方では畳のサイズをもとに柱を建てて、そこから部屋の広さを決めていく畳割(たたみわり)という設計方法が一般的でした。

しかし、江戸時代になると一般の商家や農家でも畳が利用されるようになり、柱の距離を基準として畳のサイズを合わせていく柱割(はしらわり)という方法が広まっていきました。
その結果、近畿地方ではもともと使われていた「京間」が使われる一方で、関東地方では少し小さめの「江戸間」が新たに普及していったのです。

畳(帖)という単位は現在でも部屋の広さを表す単位としてよく用いられます。普段から目にしている畳(たたみ)で広さを表すので感覚的にもわかりやすいですね。
しかし、地域によって1畳の広さが異なっていると、不動産を選ぶ立場からすると正確な面積がわからず不便です。
そこで、不動産業界の公正な競争のためにも、現在使われている畳(帖)という単位は、不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)という規約で、1.62平米以上と定められています。1畳(帖)はおよそ1.62平米と考えて計算して問題ありません。

・各単位の関係性

面積を表すそれぞれの単位の意味は理解できましたが、面積を比較するためにはそれぞれを別の単位に変換する計算をしなければなりません
以下に計算の方法をまとめておりますので、ご参考ください。

単位計算
平米→坪平米数÷3.3=坪数
坪→平米坪数×3.3=平米数
平米→畳(帖)平米数÷1.62=畳数
畳(帖)→平米畳数×1.62=平米

3.フローリングの種類

床材選びで次に困るのはフローリングの種類が複数あることかと思います。私自身も最初は名前が似ていたりして混乱した覚えがあります。

フローリングの種類は、無垢フローリングと合板のフローリングの大きく2種類に分けられます。また、合板のフローリングは表面の材質や厚みによってさらに挽板、突板、シートに分類されます
それぞれのフローリングの特徴について確認していきましょう。

・無垢フローリング

無垢フローリングイメージ

床材の表面から底面までが一枚の木材で作られているフローリングのことをいいます。厚みのある木材を使用するので、天然木でしか出せない質感や立体感のある木目の変化が存分に味わえます。

無垢フローリングは厚み方向には木材を継いでいないのですが、長さ方向には木材を継いでいる場合があります。長さ方向に木材を継いだフローリングのことをユニタイプと呼ぶのですが、無垢フローリングの多くはこのユニタイプの商品です。これは、厚みのある木材を長く切り出すことが困難(できても非常に高価)であるためです。

無垢フローリングは、木材が繊維の中に多くの空気を含んでいるため保温性が高く、冬場も足元が温かく感じられます。
また、無垢の木材は湿気を吸ったり吐いたりしてくれるので、お部屋の湿度を調整してくれるという効果もあります。

耐用年数が非常に長いことも無垢フローリングの特徴の一つであり、30年ほどは張換えずに使い続けることができます。これは無垢フローリングには厚みがあるため、傷がついたり汚れたりした部分をやすりで削って再塗装することで、新品同様の状態に何度も戻すことができるからです。

このように一枚の木材で作られているためさまざまな恩恵を受けることができるのですが、一方で反りや収縮を起こす可能性があるという懸念もあります。湿度の変化によって木材自体が縮んだり膨らんだりするので、適切に隙間を空けずに施工した場合つなぎ目の部分が詰まりすぎて突き上げ(つなぎ目の部分が盛り上がる現象)を起こしたり、大きく隙間が空いたりしてしまいます。ただし、突き上げについては、施工の際にあらかじめ適切な隙間を空けて施工することで対処できます。

・挽板(ひきいた)フローリング

挽板フローリングイメージ

挽板(ひきいた)フローリングは合板で作られた基材の表面に、厚さ2-4mmの無垢材を貼り合わせたフローリングです。ちなみに挽板フローリングの「挽」という字は、もともと表面の無垢材をのこぎりで挽いて切り出していたことに由来しています。

挽板は表面の無垢材の厚みが十分あるため、表面の質感は無垢フローリングにかなり近いものとなります。無垢フローリングと挽板を木材の質感だけで見分けることはなかなか難しいものです。また、基材が合板でできているため無垢フローリングで懸念される反りや収縮がほとんど起きないというメリットもあります。

また、無垢フローリングに比べて天然木部分を薄く切り出すため、ユニタイプではなく長さ方向にも継がないソリッド(一枚物)の商品が多いのも特徴です。

挽板フローリングは表面が無垢材であるとはいえ、無垢フローリングにあるような保温の効果や調湿の効果はそれほど期待できません。

・突板(つきいた)フローリング

突板フローリングイメージ

突板(つきいた)フローリングは合板で作られた基材の表面に、厚さ0.2-0.5mmほどのスライスした木材を貼り合わせたフローリングです。基本的なつくりは挽板と同様なのですが、表面の無垢材の厚みが異なり突板の方が薄くなっています

ちなみに、突板の「突」という字は、もともと表面の薄い無垢材をノミで突き出して製材していたことに由来しています。挽板との区別に役に立ちそうですね。

しかしながら、フローリングの表面に関しては挽板や無垢フローリングと比較すると、天然木の質感が若干損なわれるという欠点もあります。具体的には、立体感が弱くなり表情の変化に乏しいといった印象でしょうか。

表面は全部同じ無垢材なのに本当に質感が違うのかと、私も最初は疑っていたのですが、実際に商品を見て比較してみると違いがよくわかります。正直に言って挽板と無垢フローリングはなかなか表面だけでは見分けがつかないのですが、挽板と突板は明らかに違いを実感できます。

また、傷がついた際に表面の無垢材が薄いため合板の部分が露出することがよくあり、傷が目立ちやすいのも欠点の一つです。

突板は天然木を使用したフローリングの中でも、表面の無垢材の厚みが薄いため、比較的安価で手軽に入手できます。

・シートフローリング

シートフローリングイメージ

シートフローリングはその名の通り、合板の基材の表面に化粧シート(樹脂やオレフィンなど)を貼り合わせたフローリングです。これまでにご紹介したフローリングと異なり、表面に天然木を使用していないフローリングです。

シートフローリングは素材によってさまざまな機能を備えており、耐久性が高い、防水性能が高い、耐熱性能が高いなど用途に合わせて選べるという利点があります
また、表面は印刷のためさまざまな柄が用意されており、選択肢が広がるのも嬉しいポイントです。

木目柄がプリントされたシートフローリングは、表面に天然木を使用したフローリングと比べると、どうしても工業的な質感が強くなってしまいます
また、木目は一定のパターンを印刷しているため、よく見ると全く同じ木目が複数個所に現れたりもします。

価格帯は天然木のフローリングよりは安価であり、予算にあったフローリングを選びやすいといえます。

4.設計価格と実際の販売価格

設計価格 イメージ

フローリングを選んでいると、結局この床材を自宅に張るといくらかかるのか気になることかと思います。気になる価格を確認してみると設計価格と表記があり、結局いくらなのかよくわからないということがあります。実際に工務店へ販売する際の価格は設計価格とは異なりますので、比較検討する際は注意が必要です。

設計価格とは

設計価格とは住宅材料メーカーや卸売業者が設定する定価のようなもので、上代とも呼ばれます。

住宅材料は、多くの場合工務店から卸売業者に発注して材料の調達から施工までを行い、材料費と施工費を合わせてお施主様へ請求します。卸売業者は工務店へ商品を卸す際に、信頼関係がある工務店へは安く卸したりするなど、取引の状況によって価格を調整します
しかし、これでは設計士やお施主様といった工務店以外の人は商品の価格が分からなくなってしまいます。

そこで、一度設計価格という定価を定めて、そこから割り引くような形で工務店に卸すという方法をとります。
実際には設計価格より安い金額で工務店へ卸されるので、工務店が請求する金額は設計価格を下回ることはあっても超えることはほとんどありません

工務店以外の人も設計価格を参考にすれば、これ以上に高い金額を請求されることはないというおよその見積ができるわけです。

設計価格に施工費は含まれるのか?

設計価格という言葉の意味を調べると、材料費に施工費を加えた金額の目安と説明されていることがあります。しかし、実際には施工費や配送費を含めずに設計価格として床材の金額を表示しているケースもあります。設計価格にどこまでの金額が含まれているかはっきりしない場合は、メーカーや店舗によく確認するようにしましょう。

5.床リノベの施工方法と床材の選び方

床リノベ イメージ

床材選びで最も重要といっても過言ではないのが、床材の施工方法についてです。
私も最初は、施工の方法なんて床材を選んだ後に決めることじゃないのかと思っていましたが、そんなことはありません。
実は施工の方法によって選べる床材も変わってきますし、施工の費用や工期にも影響します
床材の施工方法は大きく2種類、捨て張りと上張りがあります。

・捨て張り工法

既存の床材を解体・処分し、下地の合板の上に床材を施工する方法です。
最も一般的な床材の施工方法ですが、後に紹介する上張り工法と比較して既存の床の解体作業の分だけ費用も工期もかかることになります。

・上張り工法

読んで字のごとく、既存の床材の上に新しい床材を重ねるように張っていく工法です。
既存の床材の解体の必要がないので捨て張り工法と比較して工期が短く、また費用を安く抑えることができます

しかし、新しく張った床材の厚さの分だけ床面が上がるので、建具(戸・窓・襖など)が新しい床材に引っかかってしまう場合があり、建具の下部をカットする必要が出てきます。
したがって、上張りの場合は施工できる床材の厚さに限りがあり、ご自宅の環境にあった床材を選ぶ必要があります。

・床材選びの際に気をつけること

床材選びの際には、ご希望の床材が施工できるかどうか確認しながら選ぶ必要があります。もしお気に入りの床材が見つかったとしても、ご自宅の現況によっては施工ができない場合があります。また、施工の方法によって期間や費用も変わってきます。

業者の方に相談して、どのような床材が施工可能か、また施工可能な場合でも費用や期間はどのくらいかかるか確認しながら床材選びを進めるとよいでしょう。

5.まとめ

建築業界は非常に専門用語の多い世界です。リノベーションはなかなか慣れないことの連続で苦労することも多いかもしれませんが、この記事をここまで読んでいただいた方なら、さまざまな商品の特徴を比較することができるかと思います。
そうすると市場の相場も分かってきますし、おのずとお気に入りの床材が見つかることと思います。
また、床材のことでわからない点などがあれば、キャスオンラインの岡までご連絡いただいても構いません。皆さんの床材選びのお役に立てるよう、可能な限りご支援いたします。
この記事が少しでも、皆さんの床材選びの参考になれば幸いです。

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