特集でもご紹介しておりますが自社物件の改修に伴い田中工房さまと共にリノベーションの企画に取り組みました。今回手掛けた物件は福岡市中央区築42年のマンション、元々事務所仕様だった空間を居室兼テレワークスペースを完備したお部屋にリノベーションするといった企画でございます。…
fl-1505 アカシア無垢フローリング施工事例
2024.11.22
今回お邪魔したのは中西ヴァイオリン工房様。薬院駅から徒歩3分、ビルの2階にひっそりと仕事場を構えていらっしゃいます。お話を聞いたところ、以前勤めていたヴァイオリン工房から独立し、薬院におひとりで工房を構えたとのこと。工房のリノベーションが無事に終わったとのお話を聞いて、さっそくその貼り映えを見せていただきました。
採用して頂いたフローリング
fl-1505 アカシア無垢フローリング ラスティックグレード[120ミリ幅/オスモオイル塗装]
今回お使いいただいたのはアカシアの無垢フローリング。ここ10年ほどで無垢材としての利用が一般的に広まった新しい木材で、今ではすっかりその地位を確立したように思います。アカシアは本来、チーク材などの高級材の代替品として利用され始めたという背景があり、比較的深めの発色が魅力的な木材です。
床の施工をはじめ、リノベーションのほとんどの工程をご自身で行われたとのことで、大変驚きましたが、さすがはお仕事でも木材を扱う職人さんです。
ヴァイオリンなどの楽器も木材で作られているため、無垢フローリングとの相性も非常によく、空間全体が自然の温かみを感じさせてくれます。大都会薬院の中心にありながら、都会の無機質さを感じさせない、異質な空気を漂わせていました。
室内の家具もまた木目が美しくレトロな雰囲気を感じるものが多く、風格さえ感じさせられます。アカシアの色味とソファのダークトーンが美しいコントラストを生み出しており、さまざまな家具と相性のいいフローリングであることが分かります。
このグレーの腰壁ももちろん、ご自身で施工されたとのこと。腰壁の色味がやわらかいので、高級感もありながら親しみやすさも感じる特別な空間に仕上がっています。
入口の方を振り返るとかなりレトロな洋タンスが目に入りました。ヴィンテージ家具に深い色味のものが多いのは、木材そのものや塗装に利用されるオイルが経年によって深い色へ変化していくことと関係が深いそうです。経年によって変化していく木材の表情は唯一無二のものであり、人工的に再現することはまだまだ難しいのですね。木材を利用した家具が愛され続けているのは、やはり木材でしか手に入らない質感や表情の深さを大切にしているからなのでしょう。
作業台には修理中のヴァイオリンとさまざまな工具が所狭しと並んでいました。手作業でしか行えない職人の技にロマンを感じます。
窓の近くは光が当たり、床材がまた違った表情を見せます。木材は光を適度に吸収する性質を持っているので、まぶしすぎず目に優しい光を返してくれます。
窓際の様子をみると、アカシアは独特の光沢感とも呼べる質感を持っているように感じます。これは、ウォールナットなどの高級材がもつ自然な光沢感に似ています。表面はオイル塗装仕上げなので、マットで限りなく木の質感に近いのですが、光の当たり具合で自然で滑らかな光沢を見せてくれます。
中西さんが楽器を調整されている様子です。右奥に見えるアーチ状の入口が、部屋全体にやわらかい印象を与えています。改めて考えてみると弦楽器の形も曲線が多く、やわらかい印象を受けますね。
弦楽器もフローリングと同様、木材から作られています。現在でも作り方が大きく変わっていないのは、木材でなければ生み出せない振動と音色があるからでしょう。楽器に木材を利用するのは、美しい音色を追求するための必然なのです。
フローリングをはじめ内装材には、今なお多くの木材が利用されています。木材がもつ表情や質感が私たちに与えてくれる安らぎは、ヴァイオリンの音色のように、ほかでは代えがきかない種類のものなのかもしれません。