部分リノベに最適な床材の基礎知識
2023.08.30
ご自宅の水回りのクロスが剥がれ、床材の軋みが気になる・サッシ際の床材が変色してきたなど長年居住していると経年し床面や壁面、設備など調子が思わしくなく自然とリフォームを検討される方も多いのではないでしょうか。リフォームと聞くと資材・設備の検討の時間やコストなどハードルが高く、大規模な修繕を伴う場合はどうしても踏み切れない事案になってしまいます。
そんな中部分部分リノベと言って読んだ字の如く、局所的にご自宅の一部を修繕するといったサービスが近年増えております。部分リノベをする際どういった流れなのか、床材を交えメリット・デメリットを踏まえて解説していきましょう。
1.部分リノベをするメリット・デメリット
部分リノベ(局所的改修)や住みながらリノベ等じわじわと人気を博してきております、部分リノベを行う上で理由としてよく挙がるのが下記の3通り。
- 理由①早急にネガティブな箇所を修繕・変更したい
- 理由②もっとも状況が思わしくない箇所をローコストで改善したい
- 理由③入居する家族が増える(2世帯・新生児)
他にも多々ございますが、主に水回りのトラブルや災害等緊急性が高い箇所、コスト面、相続や入居するご家族が増えるなど将来を見越してお問合せ頂く機会が多いです。大規模なリフォームでは無く部分リノベを行う良い点・ネガティブな点等まとめていきます。
部分リノベをするメリット
メリット①コスト面が分かりやすい
大規模なリフォームを行う際確認する項目が多く結果どこでもお洒落にしたい・ご家族一人一人こだわりがある為想定外の費用のお見積もりを見て断念される方も多いのではないでしょうか。局所ごとにリノベーションすることでコスト管理が安易になので少々こだわってみたり安価にしたりプランニングが立てやすくイメージもしやすいかと思います。
用途として安価にしたいのか、少々意匠面を加味するなどじっくり考えれる為あらゆる情報の整理が苦手な方は部分リノベをお勧め致します。
メリット②工期が短い
当然ですがご自宅前箇所リフォームするより、部分的にリノベーションする方が工期が短いのも特徴の一つです。ユニットバスやトイレの入れ替えなどは数日で終わる工事が多く実際に住まわれながら、施工していくケースも多くまだ終わらないか?などそわそわすることは無いので安心でございます。
メリット③選定する時間をかけれる
大規模にリフォームを行うと各内装材や住宅設備などのショールームへ行き、実際に見てみてはカタログを確認し比較するなどかなりタイトに資材を決めていく現場も多くお施主様が迷えば担当者もイソイソと慌しい印象ですがスポットでリノベを行うとじっくり住設や内装材を考えることが出来ます。ご自分のペースに合わせてじっくり決めていけるのも魅力だと言えます。
部分リノベをするデメリット
デメリット①内装デザイン面において統一感を出すのが難しい
床材やクロスなどスポットで張替えすると他の部屋との見た目やコンセプトの違いの差異が出ます、又お風呂やトイレ・洗面台の交換に関してもデザインや機能面で気になる方は気になるはず。
お洒落な方は上手く調和させていくかと思うのですが上手く新旧のデザインを活用できる方にはデメリットでは無いのかもしれません。
デメリット②希望通りに施工出来ない場合がある
以前トイレ内に手洗い水栓を付けたいとご希望があったのですがトイレが狭く、住宅の構造から管を引けない現場がございましたが調査をしてみるとご希望通りに進まない箇所もございます。
お施主様ご自身でお好みの住設を探されご提案頂くケースもあるのですが、サイズが合わない、規格上使えないなど諸々ございます。
デメリット③想定していた費用を超える場合もある
いざ現場にて調査を行うと部分リノベする箇所とは別に劣化している箇所を発見することがあります。水回りは配管設備が悪くなっていたり、電気配線等も危険なので取り換えた方が良いケースなどございますので劣化している箇所に関して別途ご相談することもございます。
勿論費用感なのでいざ実施したり、しなかったりとするのですが、デメリットでは無いですが現況のご自宅の部分的な劣化している箇所を確認出来る機会なのでライフライン等で重要な箇所は見て頂いた方が良いかと思います。
2.フローリングも部分リノベできる?
部分リノベの良し悪しを解説しましたがではフローリングの部分リノベは可能なのでしょうか。答えは勿論可能でございますが、フローリングを張り替える際のご注意点がございます。どういった箇所に気を付けた方が良いのか次項から解説していきます。
床材の部分リノベを行う際の注意点
施工方法でコストや工期が変わる
床材の施工方法は大きく分けて2通り有り一つは床面の下地からやり替える捨て貼りもう一つは既存床の上から新しい床材を張っていく上張りといった工法の2通りございます。
上張りは既存床面から張っていくのみなのでコストも安価で工期も短いのですが、下地からやり替える捨て貼り工法の場合は工期やコスト面がやや高くなります。
既存床と同じ床材は廃盤している可能性がある
以前現場調査に伺った際「現状の床材と同じものを張り替えて下さい」といったご相談がございました。しかしながら、現状の床材は十数年前に販売されていたものでありお色や規格など全く同じものは無く廃盤していたといった現実がございました。メーカー品でも無垢フローリングでも同様なのですが全く同じものは手に入らない可能性もございます。
色調や素材感をあわせる
前項でご紹介した統一感と同様なのですが、例えば玄関から廊下にかけてリビングをどういったお色や素材感であわせていくのか考えなくてはなりません。又素材によって規格(床材の高さや幅・長さ)も考慮しつつ実際に張れるのか検討する必要があります。
床暖房がある場合はフローリングの部分リノベはできる?
床材を販売していてかなりお問合せ頂く内容なのですが、床暖房上に施工されている床材のみ張替えは困難なので床暖房機器の新調まで併せてご検討頂いております。
床暖房を使う頻度や温水循環なのか、ガス式床暖房なのか?などどういった床暖房設備を導入されているかなどで施工方法が変わってきます。現状オール電化などの兼ね合いもありますので導入したメーカー様と併せてご相談されることをお勧めしております。因みに床暖房対応のフローリングもご用意しておりますので詳しくは下記よりご覧ください。
バリアフリー化するケースはどの無垢材がお勧め?
バリアフリー化の施工も部分リノベの一つで補助金の兼ね合いもあり部分的にリフォームされる際ご相談頂きます。ご家族の足腰の負担を考えると杉や檜などの針葉樹が良いのですが、最近は車いすなどを使用する目的としたリフォーム(廊下幅や間口を拡張や手すり設置)を推進されているケースがあるのでオーク(ナラ)やチェストナット(栗)材など硬い無垢材(広葉樹)をお勧めしております。
車いすを使用する場合柔らかい樹種(杉や檜)ですと傷やタイヤ痕などがつくリスクがあり、後々後悔しないようご家族のご意見と併せてご検討頂ければと思います。
3.フローリングを張り替えるか上から床張りするか?
冒頭でも軽く触れましたがフローリングを部分リノベする上でかなり重要な要素が1.既存の床材を解体し新たなフローリングを張る捨て貼り若しくは既存床よりフローリングを上張りするいずれかになります。
2つの工法のメリットとデメリットを解説していきたいと思います。
捨て貼りする必要があるケース
先ず捨て貼り(すてばり)とは根太上に厚み12㎜くらいの下地合板を敷き下地の上にフローリングを張っていく工法です。下地合板があることで断熱性や床面の強度が強く経年した際の床鳴りや撓みなどを発生するリスクを抑えられるスタンダードな工法です。下記より捨て貼りする必要が有るケースをまとめてみました。
床下に異常がないか?
部分的にリノベーションを行い床材を張って行く上で、抑えて頂きたいポイントが数点あります。先ず挙げられるのが、床下下地の腐食や湿気による床面陥没など床面自体が何らかのトラブルにあっていないかどうか。
床下の状況を確認しないといけない状況ですと自然に上張りをするご提案も進めづらくなります、実際確認した例をお出しすると当初お施主様自ら上張りを希望されておりましたが床材の腐食が進み床下を確認したところシロアリの被害にあっていた為床下の構造材もダメージを受けており急遽床下の大引きや構造を補強しつつ捨て貼りを行うといったケースもございました。
お部屋ごとに床面の高さが異なる
次に挙げられるのが築古のマンションなどよく伺った際にご提案するのですが、床面の高さが段差などで各お部屋ごとに異なるケース。各お部屋全て水平にしてしまいたいところですが、上張りすると天井までの高さが不均一になりかつ建具材の兼ね合いなども調整していかないといけません。こういったケースの場合段差を解消し、部分リノベを行う際どのお部屋の高さを元に調整するかなど情報の整理が必要となってきます。
建具を切れないケース
最後に挙げられるのが、サッシ付近の高さを調整できない、建具材を切り調整不可のケースです。上張りをするとどうしても既存床面より床材の厚さ12-15mm分高くなります。高くなったらどうなるかというと収納のドアやドアなどの下部が上張りした床材に当たる、サッシ枠より高くなり見栄えや使用上不都合が生じます。
建具下部をカット出来れば問題無いのですが、下地からやり替えればこういった問題も生じません。コストや施工する期間や資材なども含めて検討併せてご検討する必要がございます。
上張りが可能なケース
先ず上張り可能なケースは前項の逆で、床下に異常が無く、各お部屋ごとフラットで建具や枠を調整出来るお部屋であれば上張りしても問題無いかと思います。
稀に床暖房を使用しているも上張り可能ですか?といったお問合せを頂くのですが、基本お勧めしておりません。上張りすることで熱源から遠のく為床暖房の機能に期待できない結果になる可能性が高い為です。
4.下地から張替え・上張りのメリットデメリット
前項で解説した通り床面や床下ダメージを受けてない・建具や造作材の兼ね合いにて問題無い場合は基本床材の上張りは可能でございます。上張り出来るのであれば時間とコストが掛からないので全て上張りでも良いのでは?とお考えの方向けに上張りと下地から張り替える際のメリット・デメリットを解説していきたいと思います。
上張りのメリットとデメリット
メリット①コストが安い
上張りを選択するメリットとして第一に挙げられるのがコストが他の工法に比べて安価な点です。既存床面より新床材を張っていく作業のみなので大工さんの人工代も安価であり、他に発生するコストとしては新しい床材代ぐらいなので全体的にローコストで床を新調することが出来ます。
以前から気になってたお洒落なフローリングを使いたい・無垢フローリングを使ってみたいなど意匠面においてコストを使えるので、部分的にリフォームする際上張り出来る環境であれば人気の工法と言えます。
メリット②短工期
ご自宅全て床面をリフォームするのであれば、しっかり養生をし搬入の準備を行いいざ床張りと用意周到な状態にて施工を行うのですが部分的な床面のリフォームは大がかりな搬入や養生・ごみ捨て・美装など行う必要が無いので工期が短く、6-10畳程であれば平均2-3営業日程で施工完了となります。
メリット③強度と防音性能強化に期待が出来る
おのずと構造上既存床がフローリングの場合2重床となる為、床面の強度と防音性能の向上に期待が出来ます。お建物や床下の構造にもよりますが、歩行すると床下が空洞のようなニュアンスがなくなり2Fなど歩行している際の音も僅かながら小さくなるケースもございます。
デメリット①床鳴りや軋みなど発生するリスクがある
上張り施工した直後~数年にかけては問題ないのですが、経年すると元々あった旧床材と新たに張った床材が干渉や摩擦した際に床鳴りといって歩行した際の軋む音など発生するリスクがございます。元々上張りする前に既存フローリングが床鳴りしていて上張り施工を行った後気になりだしたというお施主様もいらっしゃるので施工する前に現況を把握して頂くことをお勧めしております。
デメリット②床面の高さが上がり建具・収納などの加工が必要になる場合がある
前項でもご紹介しましたが、床面部分リノベを行った際他お部屋との境目や敷居部に段差が生じます。段差が生じた結果、建具や収納扉の下付近をカットする等加工が必要となります。また天井面が近くなるので天井が高ければ問題無いのですが圧迫感がでるなど諸々不都合が生じます。
デメリット③床下トラブルを把握できない
既存床下を調査しないまま上張りをしてしまうと、下地の劣化や湿気過多によるカビの発生・シロアリ被害などトラブルを発見できない結果になってしまいます。
特に水回りは劣化しやすい箇所なので、部分リノベを行う際は現状を把握して頂き上張りにするか、トラブルが生じているのであればまるごと張替えとご検討頂くことをお勧めしております。床下のトラブルはお建物自体の劣化やトラブルの要因となりますのでご注意が必要です。
捨て貼りのメリットとデメリット
メリット①断熱性と床面の強度が高い
下地合板の上にフローリングを張っている為、断熱効果や強度向上に期待できます。さらに経年した際の床鳴りや軋みのリスクも上張りに比べ低く長い目で見てお勧めの工法でございます。
無垢フローリングを施工する場合は無垢材自体も断熱性能や防音機能を兼ね備えている為さらに床材の機能として期待できる結果に。
メリット②床下環境から見直すことが出来る
捨て貼り工法は既存床を解体し新たに下地・フローリングを新調する工法の為解体を行った際に、既存床下の状態をしっかりと把握することが出来ます。何かトラブルが発生していないか、発生しやすい箇所は未然に対処するなど将来のご自宅のトラブルの要因解明に役立ちます。
下地から新調すると衛生面や精神衛生上安心するといったお施主様もいらっしゃるので、長い間ご自宅を施工業者や大工さんなど第三者に見て頂いていないのであれば確認して頂くことをお勧め致します。
デメリット①コストが高い
捨て貼り工法は既存床下地から解体を行う為、解体費用や処分費用が発生致し、さらに下地用合板・新規床材代と上張りに比べると見積もり項目が増えます。
築年数など古い物件は高さを合わせたり、巾木を新調するなど劣化具合に応じてどこまでやり替えるかなど検討しなくてはなりません。
デメリット①工期が長い
上張り工法と比較すると、工期が長くなる点もデメリットの一つだと言えるでしょう。床下の状況によって改善する工事や技術を必要とし、解体や下地設置・既存床処分など数々の手間が発生致します。
予め床下のトラブルなど施工業者さまや大工さんが確認出来れば良いのですが、床面を解体時思わぬイレギュラーに遭遇することも多々ございますので、工期がやや長いといったご認識でご検討下さい。
5.床材を張り替えるタイミングは?
床面部分リノベの概要をお伝えしましたが、結局張り替えた方が良いのか・悪いのか。実は合板フローリングや突板フローリングの耐用年数は15-2o年程と言われておりますが、床面のダメージ具合によって張り替えるケースも多く床鳴りや軋みは床面(下)のダメージのサインなので、建築関連の業者さまに見て頂くことが良いかと思います。
床鳴りや軋みはフローリングの劣化・下地用合板が劣化、さらには根太や大引きといった床下の構造が老巧化しているケースもあり、床面の凹みややや陥没しつつある事象は下地が腐食している可能性など生活に支障があるレベルまで行かぬよう未然に対処が必要となってきます。
6.部分リノベに最適な床材の基礎知識まとめ
手軽に意匠面の向上や利便性の改善など手を加えることが出来る部分リノベーション、新築した当初やリフォームを行った当初断念し使ってみたかった住宅資材を使うなどさらなる需要が増しております。大規模なリフォームだと気が進まないが、目に見える範囲だけやって欲しい、コストを最小限に抑えたいなどお客様の声が多いのも事実ですが床材に関してはご自宅のトラブルのリスクと併せてご検討頂くのが宜しいかと思います。
ずっと現自宅にて居住する、賃貸に出すかもしれない、将来売却する可能性があるなどライフスタイルはそれぞれですが長い目で少しづつ手を加えてあげると自ずと大規模なリフォームを行わなくても良くなる可能性もございます。もし床面をリノベーションする際の参考にご一読頂ければ幸いです。